研究の枠組み
腰痛を有する成人9名を解析対象とした、無作為化・単盲検クロスオーバー試験です。緩消法と対照施術を2週間隔で実施し、HMT Dual Scanで血中580成分を測定しました。登録番号はUMIN000049180です。
クロスオーバー試験の流れ
→
→
割り付けられた順序で、同じ参加者が両方の条件を受けます。
何が報告されているか
発表資料は、緩消法条件内で施術前から変動した21成分を取り上げています。一覧の「初回有意」は、施術前と10分後・30分後の条件内比較による時点です。対照施術との条件間比較も併せて見ることで、介入に関わる応答をさらに詳しく検討できます。
| 資料中の例 | 条件内の変化 | 記載された条件間P値 |
|---|---|---|
| Retinol-2 | 10分・30分後に増加 | 10分:0.4597/30分:0.0987 |
| Acylcarnitine (13:1)-3 | 10分・30分後に増加 | 10分:0.8321/30分:0.3935 |
上の2成分の条件間比較はいずれもP≥0.05でした。表には施術前からの変動と対照条件との差を分けて示しています。
報告された21成分を一覧で見る
学会発表の結果
2025年の学会発表資料では、増加9成分・減少12成分が一覧化されています。「初回有意」は、緩消法条件内で施術前との差が最初にP<0.05となった時点という、資料の定義です。対照施術との比較結果は、条件間解析として併せて確認します。
| 資料上の成分名 | 変化の方向 | 初回有意 |
|---|---|---|
| 3β-Hydroxy-5-cholestenoic acid-3 | 増加 | 30分 |
| 5β-Tetrahydrocortisol-1 | 減少 | 30分 |
| Acylcarnitine (13:1)-3 | 増加 | 10分 |
| Acylcarnitine (17:0)-2 | 増加 | 30分 |
| Auraptene-1 | 増加 | 30分 |
| Biliverdin | 減少 | 30分 |
| cis-Aconitic acid | 減少 | 10分 |
| Dehydroisoandrosterone 3-sulfate-2 | 増加 | 30分 |
| Deoxycholic acid | 減少 | 30分 |
| Gluconic acid | 減少 | 10分 |
| Glycochenodeoxycholic acid | 減少 | 10分 |
| Homoarginine | 増加 | 30分 |
| N1-Acetylspermidine | 減少 | 30分 |
| N2-Phenylacetylglutamine | 減少 | 30分 |
| Pyrocatechol sulfate | 減少 | 10分 |
| Retinol-2 | 増加 | 10分 |
| Ricinoleic acid-3 | 増加 | 30分 |
| Ser | 増加 | 30分 |
| Taurolithocholic acid 3-sulfate | 減少 | 10分 |
| Trilaurin-4 | 減少 | 30分 |
| β-Estradiol-117/α-Estradiol | 減少 | 30分 |
名称と末尾番号は発表資料の表記を保持しています。成分の同定確度や異性体の区別を確認したうえで、標準物質を用いた定量などの再検証へ進むことが考えられます。
科学データから、どの可能性を考えるか
研究構想
| 注目する方向 | 今回の手がかり | 検証したい問い |
|---|---|---|
| エネルギー代謝・疲労 | Acylcarnitine (13:1)-3、(17:0)-2の増加、cis-Aconitic acidの減少。 | 血中濃度と、脂肪酸などの基質利用、代謝の流量、疲労の変化を同時に測ると、どのような関係が見えるか。 |
| 炎症・酸化還元に関係する応答 | Retinol-2やAuraptene-1の増加、Biliverdinの減少。 | 炎症マーカー、酸化還元指標、臨床症状も同じ時間軸で変化するか。 |
| 内分泌・ストレス・疼痛 | 5β-Tetrahydrocortisol-1やβ-Estradiol-117/α-Estradiolの減少、Dehydroisoandrosterone 3-sulfate-2の増加。 | 産生・代謝・排泄のどの過程と関連するか。疼痛やストレスの変化との関係はあるか。 |
| 胆汁酸・腸内環境との関係 | Deoxycholic acid、Glycochenodeoxycholic acidなどの減少。 | 食事、採血時刻、腸内由来の影響を揃えた場合にも再現するか。 |
| ポリアミン・アミノ酸関連の応答 | N1-Acetylspermidine、N2-Phenylacetylglutamineの減少、Serの増加。 | 関連する代謝物を同時測定し、局所の組織応答や症状との関係を説明できるか。 |
脂質利用、免疫機能、炎症指標や疾患ごとの症状を直接評価する研究によって、臨床への可能性を具体的に検討できます。
この短時間の血中変化を、局所の測定や症状の経過と同じ時間軸で検証することが、次の臨床研究につながります。
ここでは、変動した成分から想定する生理機能と、その機能を直接評価する測定項目を対応づけています。
経路解析の結果を読む
学会発表の結果
| 発表資料の経路名 | 掲載P値 | 解釈 |
|---|---|---|
| Steroid hormone biosynthesis | 0.0104 | 候補となるステロイド関連経路。 |
| Retinol metabolism | 0.0923 | 掲載P値は0.05以上。Impact値は0.263。関連指標と併せて探索する経路。 |
| Glyoxylate metabolism | 0.012 | 資料上の経路名。ヒトでの具体的な代謝過程との対応を精査する。 |
経路の富化とImpactは、変動成分を経路に位置づけ、次の検証候補を選ぶ解析指標です。表では資料掲載のP値を示しています。未補正/FDR補正と各比較の対応を整理し、代謝経路の活動を直接捉える測定へ進むことが、研究を深める方向です。
代謝物の変動と生理機能を結びつける
研究構想
9名・580成分の探索で選ばれた候補を、標準物質を用いた定量と、独立した対象集団で評価する構想です。食事・活動量・採血時刻をそろえ、対照条件との差、効果量と信頼区間、順序・持ち越しを評価します。
脂質利用、炎症、疼痛の指標を同じ時間軸で記録し、血中濃度の変動がどの生理機能に対応するかを検討します。
安全性と研究情報
うえのあさがおクリニック倫理審査委員会の承認と文書同意を得て実施し、日本健康機構が研究費を支援しました。安全性の記録方法と集計結果は、論文での報告に合わせて本ページに掲載します。
原資料
本ページは、2025年の学会発表資料に基づく研究概要です。関連原稿の掲載情報は、論文・学会発表のページで更新します。
「研究構想」は今後の検証に向けた仮説・検討課題を示し、推論に基づいています。研究結果は、対象・方法・原資料とともに示しています。
最終更新日:2026年9月21日