筋弛緩と緩消法
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筋弛緩と緩消法

緩消法は、筋弛緩する際、侵襲性が無く筋損傷が伴わないまま、筋を限りなく無緊張状態にできます。

筋が硬い時の表現には、筋緊張、筋拘縮、筋癒着(*1)、筋硬結(*2)などがあります。
緩消法は、筋の硬さの状態の名称に関わらず、筋弛緩が可能です。
(※進行性骨化性線維異形成症(FOP)などの先天性の病的な症状を除く)

筋の硬さは筋の構造上、大きく分けて2つの仕組みがあります。
2つの仕組みのどちらにも、カルシウムが関係しています。
実際のところ、筋の硬さによって詳細な世界基準が無いので、あえてわかりやすく説明します。

筋緊張や筋拘縮は、筋を構成する細胞である筋原線維の中にある筋細線維が持続的に収縮している状態です。
筋を収縮させる際にはカルシウムが必要になり、神経障害や筋障害により、筋細線維にカルシウムが多く存在しており、カルシウムが筋小胞体に戻れない状態です。

筋癒着や筋硬結は、「間質(ファシア(Fascia))」のゲル化が強くなることによって、起こっています。
「間質(ファシア(Fascia))」のコラーゲン線維(筋膜)、コラーゲン線維を結びつけるレチクリン、筋損傷時に産生されるフィブロネクチンなどの線維やゲル化物質に、間質に存在するコロイド(膠質)にカルシウムイオンが付着する、または結合することによって、コラーゲン線維などのゲルの強度が上がる、また、他の組織への接着が強くなり癒着します。
そして、さらにゲル化が強くなり癒着の体積が大きくなると硬結すると考えています。
これは、筋損傷後の筋硬結を考えれば理解いただけるでしょう。よく言う「古傷が痛む」の筋の塊状の部分です。

( source: Robert Schleip , Fascia: The Tensional Network of the Human Body , 2nd edition , Elsevier , 2021)

1989年にアメリカのミネアポリスで行われた第1回の国際筋痛学会で、筋硬結に関する形態学的な共通認識として提案(1)された1つに、「局所に酸性ムコ多糖類 (プロテオグリカン )(*3) が過剰に蓄積」の項目があります。酸性ムコ多糖類 (プロテオグリカン )は、間質のコロイド(膠質)に含めて考えています。

エジプトのIbrahim SAらは、プロテオグリカンは、動物の細胞間マトリックスの主要な成分で、ここでは他のプロテオグリカン、ヒアルロン酸、および線維性マトリックスタンパク質(例えばコラーゲン)と大きな複合体を形成している(2)と報告しています。

また、イギリスのRiley Gは、tendinopathy(腱症)の病態においては、プロテオグリカン(GAG)の蓄積が観察されると報告しており、これらの特徴は正常な腱でも見られるため、必ずしも病理的であるとは限らないが、これらの蓄積が組織の硬化や機能低下に影響を及ぼす可能性がある(3)と報告しています。

これらのことから、筋癒着や筋硬結はカルシウムと間質のコロイド(膠質)の一部であるプロテオグリカンの蓄積には関連性があると考えられ、可能性についての詳細やメカニズムをさらに研究する必要があります。

腰痛・肩こりのような慢性疼痛の場合、筋は持続的に硬さを維持しているため、一種の癒着あるいは硬結ともいえます。

筋癒着と筋硬結の区別は、筋線維間の癒着した範囲(体積)が大きくなると筋硬結になると理解すればわかりやすいです。

筋硬結部の筋損傷が進むと、筋は石灰化(4)(*4)となり、筋の石灰化が強くなると筋は骨化(*5)となることからも、筋の癒着と硬結もカルシウムが関係していることが考えられます。

筋の石灰化についての研究は平滑筋である血管が多くあります。一方、骨格筋での文献は少ないが、石灰化は損傷や炎症で起こる状態は知られています。
「骨化性筋炎」や、「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」「異所性石灰化」「異所性骨化」は画像診断可能ですが、筋組織的には、筋の癒着と硬結はこれらの疾患の軽度の状態と考えています。

緩消法の開発には、筋線維間・筋束間・筋間を筋収縮量の差異がおこる運動をさせることにより、「間質(ファシア(Fascia))」の間質液の増加・カルシウムイオンの移動を促すことにより、「間質(ファシア(Fascia))」のゲル化をゾル化させ、筋と筋、筋と皮膚、筋と骨などの癒着を解消させるために開発されました。
その結果、実際に筋硬結も簡単に縮小させることができています。

緩消法は、筋線維間・筋束間・筋間を筋収縮量の差異がおこる運動を広範囲に行うため、「緊張した筋に先端が球状の物体(手指で良い)を約1㎠の範囲で筋線維に直角に、約500gfの圧力で押し当てたまま、筋を伸縮させ筋を弛緩させる」ことを行います。

この結果、筋弛緩する際、侵襲性が無く筋損傷が伴わないまま、筋を限りなく無緊張状態にできます。

筋緊張や筋の硬さ、癒着や硬結、さらには石灰化、なにより血行不良による痛みや神経症状に苦しむ方が一人でも多く救われる治療法であると確信しています。

是非、医療現場に緩消法を取り入れていただき、痛みや病気に苦しむ、一人でも多くの患者さんを一緒に救っていきましょう。

(*1) 癒着とは、本来は分離しているはずの臓器・組織面が、外傷や炎症のために、くっつくこと。
(*2) 筋硬結とは、柔らかい組織が病的に硬くなった状態。炎症や鬱血うっけつが長期に及んで結合組織が増殖し、硬化すること。
(*3) 酸性ムコ多糖類 (プロテオグリカン )とは、多糖類を含むたんぱく質であり、細胞の保護や細胞と細胞をつなぎ合わせるセメントの役割をする
(*4) 石灰化は、組織内にカルシウム塩(特にリン酸カルシウム)が沈着する現象を指します。
(*5) 骨化は、非骨組織が骨組織に変わる現象を指します。

(1) Awad EA , HistopatholegicalChanges in Fibrositis.RrictionJR,Awad EM (eds ) Advances in Pain Re−search and Therapy .Ravcn Press ,17 :249 258,1990.
(2) Ibrahim SA et al, Syndecan-1 is a novel molecular marker for triple negative inflammatory breast cancer and modulates the cancer stem cell phenotype via the IL-6/STAT3, Notch and EGFR signaling pathways. Mol Cancer. 2017 Mar 7;16(1):57
(3) Riley G. The pathogenesis of tendinopathy. A molecular perspective. Rheumatology (Oxford). 2004 Feb;43(2):131-42. doi: 10.1093/rheumatology/keg448. Epub 2003 Jul 16.
(4) Micheli A, Trapani S, Brizzi I, Campanacci D, Resti M, de Martino M. Myositis ossificans circumscripta: a paediatric case and review of the literature. Eur J Pediatr. 2009 May;168(5):523-9. doi: 10.1007/s00431-008-0906-8. Epub 2009 Jan 8. PMID: 19130083.

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