緩消法の最適施術条件

背景

筋肉の緊張(筋トーヌス)は、人が安静にしていても完全には消失しない生理学的現象です。
しかし、慢性的な痛み(腰痛や肩こりなど)では筋肉が常に過度に緊張し硬くなるため、痛みや可動域制限の原因となります。
こうした筋緊張を安全に取り除く手法として2007年に開発されたのが「緩消法」です。
緩消法は、筋肉に対して軽い圧力を加えながらわずかな自動運動を行わせることで、短時間で筋を弛緩させる新しい手技療法です(cir.nii.ac.jp)
本稿では、緩消法の科学的効果について、最新の研究に基づき背景から方法、結果、臨床応用まで詳しく解説します。

方法

最新の研究では、健常な成人41名を対象に緩消法の筋弛緩効果を検証しました(jstage.jst.go.jp)
被験者には椅子に座った状態で一側の腰背部の筋肉(腰部脊柱起立筋付近)に押圧棒を当て、上体を左右に傾ける側屈運動を5分間行ってもらいました。
側屈の角度は左右15度程度とし、一定のリズム(1分間に60回)で動くようメトロノームを用いて指示しました。押圧棒には常に圧力が数値表示される装置を取り付け、無押圧(0g)から250g、500g、750g、1000gまで5段階の押圧条件で実施しました。

また、押圧する先端の面積についても、直径1cm、2cm、3cmの3種類を比較しました。筋の硬さ(筋硬度)はデジタル筋硬度計(TDM-Z2型)を用いて施術直前と直後に計測し、その前後比(施術後の値÷施術前の値)を算出しました。
さらに、押圧500g条件では反対側(非押圧側)の筋硬度も同時に測定し、他の部位への影響があるか確認しました。
得られたデータのうち、筋弛緩効果が有意であった押圧500gおよび750gの条件について、性別、BMI(体格指数)、介入前の筋硬度の違いによる効果差を統計学的に検討しました。
解析には反復測定分散分析および事後検定を用い、有意水準は5%未満と設定しました。

結果

5段階の押圧条件による筋硬度の前後比の平均値は、押圧なし(0g): 0.97、250g: 0.95、500g: 0.85、750g: 0.87、1000g: 0.88となりました(cir.nii.ac.jp)
数値が1.00より小さいほど筋が柔らかくなったことを示し、500gおよび750gで施術した場合に筋硬度が他の条件より有意に低下しました。
一方、1000gと250gでは筋硬度の低下は小さく、押圧しなかった場合と大差ありませんでした。
押圧先端の大きさについては、直径1cm: 0.85、2cm: 0.87に対し、3cmでは1.06と逆に筋硬度が上昇しており、大きな面積では効果が減弱することが分かりました。

また、押圧500g条件で反対側の筋硬度を測定したところ、施術を行っていない側の筋には硬さの変化が認められず、緩消法の効果が押圧した部位に限定的であることが示されました。
加えて、性別(男性/女性)やBMIの違い、施術前の筋硬度の高低といった被験者の要因によって、筋弛緩効果(筋硬度低下量)に差はみられませんでした。
つまり、緩消法の筋弛緩効果は老若男女問わず、体格や筋緊張の程度に関わらず安定して得られることが明らかになりました。

臨床応用

緩消法は今回の研究結果を踏まえることで、臨床の現場でより効果的に活用できます。
例えば、慢性的な腰痛や肩こりなどで筋肉が硬くこわばっている患者に対し、痛みの原因となっている部位に本手技を5〜10分程度施すだけで、筋硬度を大幅に下げることが期待できます。
実際に、腰部への緩消法施術により筋の硬さが和らぎ、患者の痛みの訴えが軽減したとの報告があります(jstage.jst.go.jp)

筋肉が短時間で柔軟になることで、疼痛緩和だけでなく関節可動域の改善や姿勢の是正にもつながり、リハビリテーションやスポーツ現場でも応用可能です。
特に、本手技は強い力や痛みを伴わないため、高齢者や筋肉が敏感で痛みの強い患者にも安全に適用できます。
加えて、効果に個人差が少ないことから、性別や体格を問わず幅広い患者に対して再現性高く筋弛緩効果を得られる点も臨床上の利点です。

研究的意義

本研究により、筋肉の緊張を短時間で大幅に低減できる緩消法の効果が客観的なデータで示されました。
その意義は、従来「筋は常にある程度緊張を保つ」と考えられてきた生理学上の通念を覆し、適切な条件下では筋をほぼ無緊張の状態にまで弛緩させられることを証明した点にあります。
筋硬度という定量的指標を用いた評価により、従来は感覚的に語られがちだった手技療法の効果を科学的に裏付けたことも重要です。

また、最適な押圧の強さや範囲が明確化されたことで、安全で効率的な施術プロトコルを確立するための基盤が得られました。
さらに、筋弛緩が全身に及ぼす影響について、血中代謝物の変化や自律神経への作用などを調べる研究も進められており、緩消法の効果は筋肉の柔軟性向上に留まらず、痛みの原因解明や全身の健康維持に貢献する可能性があります。
今回の知見は、手技療法の科学的理解を深め、エビデンスに基づく統合医療の発展にも寄与すると考えられます。

他技法との比較

筋肉の過緊張を和らげる手法としては、古くからマッサージやストレッチング、筋膜リリース、PNF(固有受容性神経筋促通法)など様々な技術が用いられてきました。
それぞれ一定の効果がありますが、一般に即効性に乏しかったり、強い刺激や疼痛を伴う場合もあります。
例えば、従来の深部マッサージでは筋硬度の低下が報告されるものの(jstage.jst.go.jp)、十分な効果を得るには長時間の施術や高度な技術が必要とされていました。
また、筋収縮を利用したストレッチ法(いわゆる「押し返し」のような手技)では患者自身に力を入れてもらう必要があり、痛みの強い部位では困難なことがあります。

これらと比較して、緩消法はごく弱い力を用いて短時間で大きな筋弛緩効果を得られ、施術中に痛みを感じさせない点で優れています(cir.nii.ac.jp)
筋や軟部組織を損傷させない非侵襲的な方法であることも安全性の面で特筆すべき特徴です。
さらに、技術習得が容易で再現性が高いことから、治療者間のばらつきが少なく安定した効果を期待できます。
これらの点で、緩消法は従来の手技療法に対して実用上も研究上も大きな利点を有すると言えるでしょう。

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